燃える男

spoutnik2005-05-09

最近の話題と言えば「難航しているアパート探し」。だけどこの話はあまりに新鮮すぎて書いているうちに泣けてきそうなので、バイト先での出来事を書く事にしょう。
いつものように4人で働いていたら、パトロンがなにやらケーキの箱を2つ抱えてやってきた。片方の箱には小さめのケーキやタルトが10種類くらい、もう片方の箱には大きなレモンタルトが1個。
。。。どうやら、マルセイユで人気のある(?)某お菓子屋で買ってきたらしい。今のお店はいわゆる高級菓子屋ではなくって「街のパン・お菓子屋」なので、他にもある「街の人気店」との競り合いというか、まぁ様子をうかがったりしているのだろう、わらわらと集まってあーだこーだと言い始めた。
「コレいくら?2ユーロ?重さはどのくらいあるの?150g?まぁでもイチゴ入ってるからね〜」「これってなに?ソワレ(パーティ)用のタルト?おっきすぎない?いくらで売ってんの?」「このメレンゲもまぁキレイだけど、別にうちのだって負けてないよね、好みだしね〜。」「これはさ、型がないとだめだよ。この店には型がないから出来ないんだよ」「うわっ!なにこのクリーム。全然美味しくない!」「これだって、うちの方がキレイだし負けてないょ」etc...パティシエ・ジャッキー以外の2人は批評をしているようでもさりげなくジャッキーをかばう。だってこれって明らかにジャッキーに対する挑戦(?)であって、「こういうの作れるの?」とさりげなく聞いているようなもんだから。パトロン自体がお菓子やパンを作るのではなくてマネージメントをやっているここのお店では、パトロンが作り方を提示するわけじゃないのだ。
働き始めて静かに観察している限り、このお店はもともとパン屋としてパンに力を入れてきたのだけど、最近お客も増えてきたし、今度はお菓子に力を注ごう、というのがパトロンの魂胆らしい。ともに働く唯一のパティシエ・ジャッキー(今は私が手伝いバイト)も、わたしより1ヶ月くらい前に来たばっかりだと言っていた。ジャッキーはもうパティシエ歴が多分30年とかだから、全て任されて作っているのだろうけど、なにしろひとりだから誰よりも忙しい。この「他店との比較」に静かに腹を立てるのも無理はない。
普段はにこやかで穏やかなジャッキー、そこでも怒りは表面には出さないものの、相当カチンときたようだ。「こういうチョコの飾りなら、簡単だしうちに型もあるょ。こういうのがいいの?じゃあ持って来るよ」と言った翌日、個人所有の型をいくつも持ってきて、早速チョコの飾りを作ってトッピング。「これ、昨日のに乗ってたのと同じだね」って聞くと、「そぅさ、コレっぽちの事で比べられちゃかなわないからな!」とやる気満々。
確かに味だけ取ってみれば、こっちのお店の方が断然いいと思うけど、見た目的には向こうの方がちょっとオシャレだったな。ただ、作らない人がパトロンだったりすると材料費とか型とかの制限が不条理だったりするから、そのへんの折り合いが難しそう。すでにジャッキーかなり自分の持ち物を提供してるっぽいし。まぁあんな風に比較されたら腹、立つよな、可哀想に。