ジーノのババ

バイト先のパン屋兼お菓子屋に、毎日やってくる名物おじさんがいる。その名もジーノ。
このムッシュ、何故だか知らないけど毎日、ソワレサイズのババ（サバラン）を８つ、必ず買いにくるのだ。カスタードクリームのと、ホイップクリームのとあるんだけど、カスタードの方。
もともと、一応お店にもパターンがあって、パンの他に毎日お菓子として置いてあるのは、タルト・ポムとかそういう基本的なやつ、木・金曜日は「table」という、まぁひとりで１個的なお菓子、土・日にはソワレ（パーティ）用の小さなサイズのお菓子をいっぱい出す。でも、ババだけは、ジーノが買いにくるから毎日８つ、用意しとかなくちゃならない。しかも、来る時間が決まってなくて、朝の開店（６時）前からババのためにシャッターの前で待ってたりする。
わたし「毎日、ババ８個・・・」
ジャン・ポール（以下JP）「そぉ」
わたし「日曜日は、16個」
JP「そぉ」
わたし「お友達でも来るのかな」
JP「いや、月曜は店が休みだから、月曜の分」
わたし「あ、じゃぁ夏の間は（月曜もやってるから・・・）」
JP「毎日、８個。月曜も来る」
わたし「たまには違うの食べればいいのに」
JP「ババ、だけ」
わたし「・・・」
JP「頭がね、変なんだよ」
わたし「・・・」
JP「いや実際、頭に問題があるに違いない」
この辺は特に「頭が変」人口が多い気がするのだけど、変さ加減も人それぞれ、ジーノのように一見普通のムッシュに見えても実は「ひとりで毎日ババ８個」だったりする。どんな風に食しているのか大いに気になるところである。
やはりジーノくらいの歳（６０くらい？）になると、ある程度生活パターンも決まってくるんだろうしな。例えば日本にだって、「毎日朝必ずヤクルトを飲んで、３時にはヤマザキのあんぱんを食べ、夜は缶ビールを２本飲みます」という生活を何十年も送ってる人がいてもおかしくない。ただ、「ババ８個」の「８個」の部分がやけに気になるのである。２時間おきに１個とかっていう割合で食べるのか、それとも一気に８個いっちゃうのか、昼食と夕食のデザートに４個ずつ食べるのか、単に８という数が好きだからか、箱のサイズにぴったりだからか、いろいろと想像が広がる。
はっ！今気がついたのだけど。。。ババってかなりラムがきいたお菓子。何かの事情で禁酒を迫られたジーノが、「これならお菓子だし、お酒を我慢した自分へのご褒美」として買っているんじゃぁ？３時間禁酒で１個、まる１日禁酒できたら８個。これは我ながらいい感じの推理だと思うけど、どうだろう？