モロッコ旅〜2日目エッサウィラ〜

spoutnik2005-09-20

マラケシュに着いた翌日。前日のフナ広場での雰囲気がどうも肌に合わないと感じたため、すぐに移動することにした。目指すは大西洋に面した町、エッサウィラ。ここも観光地として知られたところではあるけれど、少なくともマラケシュよりは落ち着くかなと。
ところで、今回の旅に際しては、日本語の「地球の歩き方」もないし、全く無知なところから急遽情報集めをした。フランス語で書いてあるガイドブックを買い、今までどのフランス語の本を読んだ時よりも真剣に読んだ。知恵熱まで出た。で、いろんな情報を得て(モロッココミュの方々にはお世話になりました)、「モロッコの民営バスは危ない、できるだけ国営のバスに乗るように」ということがあちらこちらに書いてあるのを発見。なんでも、民営バスは席が埋まるまで発車しないし、バスの整備も行き届いていないし、いったん発車したら今度は一刻も早く目的地に向かって次の客を乗せるために、えらい飛ばすので事故も多いらしい。さすがにバスで事故されて死ぬのは嫌だ。「なるほど。国営バスと民営バスがあるのか。気をつけよう、なるべくできることなら、民営には乗るまい」そう思っていた。
さて、朝の8時にマラケシュの宿を後にし、フナ広場名物のみかんジュースを飲んで(1杯50円くらい。が、絞りたてにも関わらずみかんの鮮度が怪しいため、若干怪しい味がする。しかも頼んでもないのにペットボトルにジュースを詰めて売りつけようとする、このへんはやり過ぎ。要らないので買わなかったけれど。)、バス乗り場に。日本やフランスで想像する「バスターミナル」とは違って、壁に囲まれてちょっと隔離されたような空間にバスやら客引きやらがひしめいている。入るなり、「どこ行くんだ?エルフートか?フェズか?」と方々から話しかけられる。「いや、エッサウィラ」。
・・・ここからはもはやオートマティックにどんどん進む。チケットを買う窓口(行き先別に窓口が別れている)に連れて行かれ、値段を言われ、ちょうど待っているバスがあれば、そこに案内される。その合間にも、目の端で「国営バス・・・」と窓口を探すものの、・・・閉まっている・・・もはや「ノン」と言うタイミングも逃してしまい、いつの間にか気が付いたらしっかり民営バスの中。
シートやカーテンは、汗と太陽と排気ガスがしみ込んで、古いトラックのような匂いがする。「満員にならないと発車しない」だけあって、車内にはびっちり人が隙間なく座っている。座席にはもちろんリクライニングなんてなく、足もとにも足置きなどない(もちろん足を組んだりできるスペースはない)。背もたれや座席はあちこち破れてウレタンがはみ出しているし、意味不明なしみだとか、落書き、もうバス自身「おいらもうくたくたですけんど」という倦怠感というか無理矢理感というか、そういうものをしみ出している。
まぁでも仕方ない。国営の窓口が閉まっているんだからな、そういう風なあきらめはけっこう早くできるタチなので(ちょっと安くついたし)、いざエッサウィラへ。4時間くらいかかったんじゃないかな。
ロッコの道路はかなりシンプルに走っているらしく、町を出るとあとはずーっとひたすら1本道が続く。たまに通るちいさな集落を別にすれば、荒野のような風景が延々と窓の外に伸びている。羊やロバを連れた遊牧民もあちこちで見かける。大地は果てしなく続き、空は途方もない。ひたすら1本道を進んで進んで、「大陸を移動している」っていう実感がすごく沸いて来た。バスはひどく揺れるので、頭がくらくらしてきた。
こうしてエッサウィラに到着。着いてバスを降りると、宿の客引きが待ち構えている。それほど多くはないけれど。一応あらかじめガイドブックで値段と相談して目安を付けておいた宿があったので、振り切ろうとすると、
「2人で80DH(ディラム)でいいから!」という。80(約1100円くらい)か。目星を付けておいたところが100DHだったから、ちょっと安い。やっぱり女もこの歳になると「ちょっと安い」という話には敏感になってしまう。
「2人で80なの?」「そうだよ、すぐ近くだから、見るだけ見に来て」「お湯も出る?(そろそろ夜は肌寒いので、これは重要)」「出る出る、お湯出るよ」「お湯のシャワーも込みで80なの?」「そう、込みで80、近くだから、ちょっと見に来て」
このような会話を交わしながらも、実際バスに揺られて頭がくらくらしているし、ちょうど着いたのが昼過ぎで太陽の日差しも強く、だんだん「近くだって言うし、見に行くか、ちょっと安いし」という感じになってついて行ってみた。
連れて行かれた先は、バスターミナルのすぐ脇の団地のようなところ。どうやら、一般家庭の1室を宿として貸しているようだ。部屋を見せてもらうとまぁベッドも清潔そうだし、シャワーもすぐ横に付いている。下手な安宿にするよりは随分いいような雰囲気だった。と、客引きの女性とは別に、大家だというもうひとりの女性がやって来て、いきなり「2人で1晩100DHだから」としゃらっと言う。
「いや、80って言うから来たの。100だったら別に行く」「100でこんなにキレイでいいところはないよ」「でもさっきと話が違うから。信用できないし。他探すよ。」「分かった、分かった、80でいいよ」
ロッコにいる間に、こんなような会話は何度となく経験することになったが、全体的にモロッコの人は引きが早い、諦めがいい、という感じがした。フランスで買ったガイドには「笑顔を絶やさず交渉しましょう、それでもしつこいとか、脅しが入るような時は、走って逃げましょう」と書いてあったので、とりあえず笑顔を絶やさないように心がけた。
なんだか喧噪のマラケシュから逃れてちょっと落ち着きを得られそうなエッサウィラまで辿り着いた2日目。この町の様子は、明日の日記にて。