ひったくり

spoutnik2006-05-08

マルセイユ=ケイタイには気をつけな!
っていうくらい、マルセイユでのケイタイ被害は多い。「ケイタイ変えたの?」「そう、取られたから」こんな会話に慣れてしまいつつあった、そんな矢先。
ついに、自分までやられてしまった。しかも、ひったくり。

この間の土曜日、バイト終わってバスを待っていた時のこと。仕事も終わってあとは帰るだけ、という気のゆるみと、その通りで特に危ない目に遭ったことがないという安心感、慣れで、いつものようにケイタイを取り出し、留守電を聞いたりしていた。
と、後ろから手がすっと、ケイタイと耳の間に入ってきた。突然のことで、つい意識は手に集中、頭が一瞬混乱して、反応が遅くなる。ふと我にかえった時には、ケイタイは相手の手に握られていた。ほんとにあっという間の出来事、ひったくりという言葉ほど暴力的でもない。
「えっまじで?!」と思い、ちょっと返してよ、と走りかけると、そいつはすぐ近くを歩いていた仲間に投げて渡し、からかうように歩いて逃げる。
え、誰か止めて?!と思ってまわりを見渡すと、あろうことか、そいつらの仲間らしき少年たちしか目に入らない。いつもは何人か待っているバス停なのに、その日に限ってバスは行ったばかり、通りにも人がいない、そんな状況だったことに初めて気づく。
犯人グループは3人。どれも10代の少年たちだ。取ってすぐに走って逃げればいいのに、わたしをおちょくるように数歩の差を置いて逃げる。

「このまま行ったらバイト先のパン屋だ・・・誰か出てきて止めてくれるかも」
そう思った私は、とりあえず叫びながら追いかけた。「泥棒!誰か!助けて〜!!!」

案の定、その声を聞いたローラン(パトロンの息子、パン担当)が走り出てきた。それを見た少年たちは一気に足を速め、ちりぢりに逃げて行った。しばらく追いかけてくれたローランが戻ってきて、今度はスクーターに乗り換え、さらに追う。

お店のおばちゃんたちやお客も出てきて、「大丈夫?!何を盗られたの?!カバン?財布?!」と聞いてくれた。「いや、ケイタイ」と答えると、みんなちょっとほっとした様子。ほんとに今思えば全く、ケイタイで良かった。カバンだったらもっと大変だ(パスポートやら財布,銀行のカード、バスカード、などなど全て入ってた)。

「ケイタイだったら大丈夫、まず止めて、それから警察に行って被害届出せばいいから。大丈夫よ。落ち着いて。」と店に戻り、電話を借りてケイタイを止める作業をする。

「まったくローランは、仕事をほっぽり投げてガキんちょ捕まえに出てっちゃったわよ!」とおばちゃんぶつぶつ。

数分後、怒りに燃えたローランが帰って来た。手を洗いながら、「奴ら3人のうちのひとりをひっつかまえたけど、そいつは何も持ってなかった。後の2人は高速の高架を超えて逃げて行った。捕まえたのはまだ10歳くらいのチビだったよ!」と。見ると、手にちょっと怪我をしている。捕まえる時に抵抗されたんだろう・・・ごめん、ローラン、わたしがちゃんと警戒してれば・・・。

「あの時(店から走り出てきたとき)は、サボだったから、上手く走れなかったんだよ、ごめん!」
そういわれてみれば、ローランは仕事中は作業用のサボを履いているんだった。さぞかし走りにくかっただろうに、と思うとなんだか不思議と可笑しくなってきて、笑った。
「いいの、よく考えたらあのケイタイ、タダだったし、もう半分壊れてるし、ほんとカバンだったら大変だったけど」
「もぅさ、何が盗まれたのか分かんなかったから、夢中でとりあえず追いかけたよ。ケイタイで良かったほんと。」
「怪我させちゃって、ごめんね、ありがとう・・・」

おばちゃんはじめ、店の女の子、パトロン、シェフ、みんなで慰め、その後の対策を教えてくれ、へこんだ気分が70%くらい戻った状態で家路についた。
このお店で働き始めて1年2ヶ月。「日本人」という差別もされず、いつも温かく(ふつうに)接してくれる店のみんなに改めて感謝。

ほんとにあれがカバンだったら、力づくで奪われてたら、逃げた方向がパン屋と逆方向だったら・・・いろんな状況を考えた中で、「ケイタイをひったくられた」以外の状況は、一番ましだったんじゃないかと思い、まさに「不幸中の幸い」だと思わざるを得ない。(こういうの、多いな)

しかし、見た目的には「いかにもマルセイユ」な少年達だっただけに、どう気をつけていいか分からず。エクスにいた時にクラスの子が言っていた、「マルセイユの人は全員泥棒に見える」というのはこういう気分のことをいうのかなと、帰りのメトロで思った次第。

やれやれ。