警察でのひとこま

spoutnik2006-05-15

携帯の被害届を出しに、警察に行ってきた。
フランスにいると、「フランス人て要領悪いなぁ・・・」と思う場面に出くわすことがままあるのだけれど(1度に2つのことができないetc)、もう警察なんて言ったらその極地をいっていた。

私「あの、さっきも来たんですけど、箱を持って来いって言われたからまた来ました」
警察1(女)「あ、箱持ってきたのね?じゃぁこの書類に書き込んで下さい。」
私「あ、はい。」

・・・

私「あの。ペン、ありますか?」
警察1「ペン?えっと、私のしかないです。」
私「貸してもらえますか?」
警察1「でも私のしかないからダメです。(横にいた同僚に)ねぇ、ペン持ってる?」
警察2「え、俺のしかない。」

・・・・・・・えっ?!終わり?!

白紙の用紙を渡されて、なす術もなく立ち尽くすわたし。それにしても何なんだこの用紙は。一応警察で使う「オフィシャル」なもののはずなのに、30度の角度くらい印刷が曲がってるけど?

と、そこにまたひとり、おばさんが携帯の盗難届を出しにきた。見るからにアラブ系のおばさん。敵は見境いなく鴨を選ぶのかと妙に納得。で、このおばさん、さらにうわてであった。

警察2「では、この書類に記入して下さいね」
おばさん「でもわたし、字、書けませんから!」
警察2「え。字、書けないの?!名前も?!」
おばさん「字は書けん!!!」
警察2「(同僚に)おいおい、どうするよ、字、書けないんだと。これって本人記入じゃないとマズいでしょ?」
警察3「え、いいんじゃね、代筆で。」

・・・っていうかさ。
字、書けないってまぁすごいけど、でもアラブ系の女性だと珍しくないでしょ?なんでマニュアルとかないわけ?!

まぁいい。ペンがなくても、代筆してくれるんだったら、してもらおうじゃないか。

私「あの、ペンがないので、私のも書いて下さい」
警察2「ほれ、ペン。」

・・・あのっ!?
今、わたし、もう5分以上、することもなく立ち尽くしてたわけですけど?あ〜、わからん、なんなんだ。

ともかくペンをゲットしたので、嬉々として名前や住所を記入。と、そこに今度は銀行のカードを盗まれたという男性がやってきた。

男性「あの・・・銀行のカードを・・・」
警察1「ちょっと!私もう既に、2人分の携帯被害届の手続きをしなくちゃならないの!もう手一杯よ!ちょっと待ってて下さい!」

あれっ。なんだかテンパってる?でもさ、現にここにはあと2人も手の空いてそうな警官がいるんだから、そっちに振ればいいのに・・・。

いろんなことを言いたかったけれど、へんな動きをしていきなり拳銃をぶっ放されても困るので、大人しく記入に励む。

警察1「じゃ、ちょっと記入は途中でいいから、2階に一緒に上がって被害届けを作りましょう。」
わたし「あ、ここ、なんて書けばいいかわからなかったんですが。」
警察1「いいからいいから、2階で一緒に考えましょっ!」
わたし「あ、はい。」
警察2「ペン。」
わたし(なんだょ、要領悪いくせに、記憶力はいいんだな)

そして2階に連れて行かれる。2階は全て個室の取調室のようになっていて、なんだか薄暗い。4つくらいある個室を全て覗いてから警察官が言った。
「どこも塞がってるわね。」

・・・いいの、突っ込んで?!用紙に記入もままならないうちに連れて来るくらいなら、先に部屋の空きを確認しとけ?!

ふとひとつの部屋を覗いてみると、狭い室内で警官が5〜6人、立ったまま談笑している。これって、明らかに、仕事で使ってるわけじゃないよね?
さすがに彼らも「あ、見付かった!」と思ったのか、「あ、いいよいいよここ使って〜。」などと言いながらぞろぞろと出てきた。

全く、これを税金泥棒と言わずして、何なんだ。

まぁそんなこんなでやっとこさ、取調室のデスクを挟んで女性警官とわたしのふたりになった。警官と2人で個室なんて、ちょっと緊張する。しかも、よく見ればうら若い女性じゃないか。25歳くらいか?なのに腰にはいろいろとおっかなそうな武器を持って、スタイルもいいし、カッコいい。

警官「さて。では被害届を作りますね。」
と、机の上には「被害届の打ち方マニュアル」。

警官「じゃぁ、いつ、どのように被害にあったか、質問に答えながら説明してください、私がパソコンに打ち込むから。」

そこからは、だいだい日本の被害届と同じである。日時や場所、相手の特徴、被害にあった物品の特徴などを、マニュアルに沿った書き方で入力していく。まぁ日本よりは少し物語り口調で、要らないと思われるディテイルも多いけど。

<わたくし○○は、5月6日午後3時50分頃、14区のChemin de Giobbes近くのバス停で、バスを待っていました。わたしはその道の41番地にあるパン屋で週末にパティシエとしてバイトをしています。仕事が終わって店の外に出て、坂を少し下った所にあるバス停でバスを待ちながら、わたしはカバンから携帯を取り出し、友達に電話をしました。そこに、後ろから、知らない人がわたし携帯を奪い取り、すぐ横を歩いていた仲間に投げて渡しました。
犯人は3人組、10歳〜15歳くらいの男子、背の高さは小さいのと中くらいのと大きいのでした。どちらかというとアラブ系で、ひとりは白いTシャツを着て、あとのふたりはグレーのジャージでした。彼らはわたしの携帯を持ったまま、坂を上って逃げて行きました。被害にあった携帯は、番号が0661××××××、Philippesの355、黒色でした。コードは0000、盗まれた時には電源が入っていました。わたしはこの携帯の停止手続きを、5月6日の午後4時に行いました。保険には入っていません。>

こんな感じである。

その後、マニュアルを見ながらハンコを押したりサインをしたりするのだけど、どこにハンコを押すのかちょっと不安だったらしく、他の警官を呼んできた。

警官1「ねぇ、このハンコはどこに押すの?」
警官2「え、俺、どこもかしこも押してるよ。」
警官1「え、ここにも?」
警官2「押しとけばいいんだよ、とりあえず全体にまんべんなく。それが仕事みたいなもんだから。」

・・・そうですか・・・そうそう、聞いてみたいことがあったんだった。
私「携帯の被害って、たくさんあるんですか?」
警官1「えぇ。すごいですよ。たくさん。1日にここだけで、100件以上は、あります。」
私「え、ここだけで?!」
警官1「そうですよ。あなたが最初でも、最後でも、ないんです(決め台詞キター!)!」

うむ、〆の台詞は決まっているけど、だったらなんでもっと要領良く被害届の作成が出来ないのかが、謎。1日100件て、いい加減ハンコの押す場所くらい、暗記しようね、ほんと。

まぁでも、彼女は感じのいい警官だった。マルセイユで困ったことがあったら、またここの警察署に来ようと(要領の悪さにも関わらず)、思った次第である。