背景

さて、この度わたしが抱えている問題は、実はパリなんかではここ数年でけっこうメジャーな問題のようだった。
「学生に対する規制が厳しくなったらしい」という声は、けっこう聞いてはいたものの、しかしここマルセイユでは具体的にどうこうと言う問題は起きていなかった。
私自身、まわりに同じ語学学生で4年目でも問題なく許可証がおりた例を前年に見ていたし、3年目の今年はもちろん、4年目の来年までは大丈夫とタカをくくっていた。



CAPという国家資格取得を、自由参加枠で受験しようと思い立ったのが昨年秋。
フランスでのバカロレア(高校卒業資格)がないため、日本で大学を出ていようと、全ての教科の試験を受けなくてはならないと知ったのも昨年秋。
それまでは、フォーマシオンと言う職業訓練校でCAP取得をしようと思っていたのだけど、実際マルセイユには外国人が行けるところもなく、フォーマシオンに行くには労働許可が必要、労働許可を得るためにはCAPが要る、というジレンマに陥った。
自由参加枠があることは聞いていたけれど、CAP自体、「フォーマシオンで勉強した人は特に有利」という話を聞いていたし、マルセイユに来て2年間はフランス語にもおぼつかなかったので、挑む気持ちになれなかった。
と、3年目、今通っている語学学校を知った。ここは、もともとが私立の中学校・高校が一緒になった学校で、その付属として、外国人にフランス語を教える部門がある。
通常はそこに登録し、学生の労働許可証を得るのだけど、この学校のいいところは、その部門に登録した人は、自由に中学・高校の授業にも参加出来るということ。ちょうど、算数や歴史、物理や体育まであるCAP受験にどう対処すべきか途方に暮れていた時期だったので、迷うことなく登録をした。CAPに必要な学力レベルは、14〜15歳なので、中学校3年生レベル。それでもわたしには難しいのだ・・・。


それから4ヶ月、もう10年以上使っていなかった脳みそを酷使して、算数やら歴史やら、時間が許せば物理など、中学3年の授業に参加。CAPの準備という理由で始めた勉強だけど、フランスで習う算数や歴史は、また違った味わいがあって面白く、間違いなく自分が中学生だったときよりも数段、意欲を持って勉強出来ている気がする。



ただ、自分的に、勉強を進めるに連れ、「今年の取得は無理かも」という気持ちが強くなった。もともと週末にはバイトをしているし、CAP取得にはただでさえ膨大な専門知識が要求される。この職業でいままで食いつないで来たとはいえ、仕事で覚えることと、教科書で覚えることは違っていたり、仕事ではそれこそ今まで知らずに来たことも、多くある。そういう専門的な勉強だけでも大変なのに、実際のところ、歴史や算数、そしてフランス語にかかる時間がかなりあり、なかなか自分でうまく進めることが出来ない。


とにかく、受けるだけ今年受けて、雰囲気だけでもつかみ、来年取得を目指そう。
そう思っていた矢先だった。